飲食店開業保健所

 飲食店を開業するために必要ないくつかの手続きや届出があります。今回は営業許可の申請についてまとめた保健所編です。

 一つ一つのことが初めてのことなので、面倒に感じることもあるかもしれませんが、手続きの流れを一度見ておくとスムーズに進められると思います。



飲食店開業に必要な資格

 保健所での営業許可の申請をする前に、取っておきたい資格があります。それは食品衛生責任者という資格です。この食品衛生責任者は飲食店一店舗に必ず一名いなければいけません。

 食品衛生責任者の資格を免除されるのが、調理師製菓衛生師栄養士管理栄養士などです。調理師免許や栄養士の資格を持っている人は、その資格を持っていることが分かるもの(免許やその写しなど)があれば、保健所で営業許可の申請ができます。

 飲食店を始めるのに、調理師免許や製菓衛生師、栄養士などの資格は必要ありません。講習を受けて、食品衛生責任者の資格を取れば営業許可の申請ができます。



食品衛生責任者の資格のとり方

 食品衛生責任者の講習は各自治体の食品衛生協会で事前に申し込みをしてから、講習を受けます。自治体によって講習の回数は月に1回〜10回くらいとかなり幅があり、満員になることが多い講習ですので、早めに申し込みをしておきましょう

 食品衛生責任者の資格を取る講習では一日かけて下のような内容の講習を受けます。

公衆衛生学(1時間)食品衛生法の基礎、食品衛生責任者の責務など
衛生法規(2時間)衛生管理や作業環境管理など
食品衛生学(3時間)食中毒の対策、食品表示、設備管理など

費用:3000円〜12000円(自治体による)

 講習終了後にもらえる修了証が保健所での営業許可の申請に必要になります。

飲食店開業の保健所での手続きの流れ

 保健所への飲食店の営業許可の申請の流れはこんな感じになっています。

  1. 保健所へ事前相談に行く

  2. 保健所へ営業許可の申請をする

  3. 店舗の確認検査

  4. 営業許可書の交付

  5. 営業開始



保健所へ事前相談に行く

 保健所から営業許可書をもらうには、法律で決められた店舗の構造や設備の基準を満たしていなければいけません。なので、内装工事を始める前の設計の段階で管轄の保健所に図面を持って相談に行きます。自分がこれから始める店舗のある地域の保健所へ行って、飲食店の営業許可を取るために必要な書類や、店舗の設備について聞いてきます。

 細かい基準は管轄の保健所に行った時に聞くのが一番(各行政によって多少違います)ですが、保健所の検査で主にチェックされる内容は次のようなことです。

  • 厨房の床は清掃がし易い構造であること
  •  ウェットキッチン(コンクリート床に排水溝)であれドライキッチン(塩ビの床、家のキッチンやトイレのような床)であれ、掃除がし易い床であること

  • 厨房は明るく換気が十分に行えること
  •  厨房内の明るさが100ルクス以上で、厨房のサイズに見合った換気扇やダクトがあること

  • 流し(シンク)と給湯設備があること
  •  シンクは食材の洗浄と、食器の洗浄を別々にできる2槽シンクであること

  • 厨房の窓には網戸をつけること
  • ネズミ、昆虫などの侵入を防ぐため

  • 厨房とトイレそれぞれに備え付けの消毒液が付いている手洗器を設置すること
  •  厨房内に流し(シンク)とは別に手洗い器が必要です。同じくトイレにも手洗い器を設置しなければいけません。その手洗い器は固定式の消毒液や洗剤を入れる容器がついているものでなければいけません、ボトルタイプのハンドソープを置くだけではいけません。
    手洗い器

  • 厨房と各冷蔵庫に温度計を備えること
  •  厨房内の見やすい所に温度計を設置します。一般的に業務用の冷蔵庫には温度計は付いていますが、ガラス張りの冷蔵ショーケースなど温度計の付いていないものには温度計をつけます。

  • 調理器具や食器をしまう戸棚を設けること
  •  棚ではなく戸棚です。戸のついていない棚は衛生上よくないのでいけません。

  • 厨房内に蓋付きのゴミ箱を置くこと
  • ”蓋付きの”というところが大事です。

  • 厨房と客席を仕切るドアをつけること
  •  厨房と客席の間には扉が必要になります。扉と言ってもバネで開閉するスイングドアで大丈夫です。

保健所へ営業許可の申請をする

営業設備の大要、配置図

 保健所へ営業許可の申請をするのに必要なのは次のようなものです。

営業許可申請書

 営業許可申請書は管轄の保健所でもらえます。自治体によってはPDFでダウンロードできるところもあります。
営業許可申請書の書き方と記入例

営業設備の大要、配置図

営業設備の大要、営業設備の配置図も管轄の保健所でもらえます。提出用と保管用の2部書く必要があります。自治体によってはPDFでダウンロードできるところもあります。
営業設備の大要の書き方と記入例
営業設備の配置図の書き方と記入例

水質検査成績書

 厨房で使う水がビルの受水槽を通っている、井戸水の場合は必要になります。ビルの受水槽を通っている場合は、管理会社もしくは大家さんに言えばもらえます。水道直結の場合は必要ありません。

食品衛生責任者の資格を証明するもの

 食品衛生責任者の資格を取った場合は食品衛生責任者手帳(修了証)。調理師や栄養士の方は免許証(賞状のようなもの)。

許可申請手数料

 保健所での営業許可の申請手数料は、自治体によってと業態によって違います。目安としてこのくらいの金額になります。

飲食店営業 16000円〜18300円
喫茶店営業 9600円〜11500円

 営業許可の申請をする時に店舗の確認検査をする日取りを決めます

※個人ではなく法人の場合は登記事項証明書も必要になります。

店舗の確認検査

 決めた日にちに、保健所の人が実際に店舗に訪れて、設備が申請通りか、基準を満たしているかのチェックをします。基準を満たしていれば後日、営業許可書が交付されることになります。不適合であれば、後日再検査になります。

営業許可書の交付

 営業許可書交付予定日に晴れて営業許可書が交付されます。保健所に受け取りに行きます。

営業開始

 受け取った営業許可書はお店のお客さんから見える所に貼っておきます。

 これで、保健所での営業許可の手続きはおしまいです。保健所の許可には期限があるので、期限が切れる1ヶ月前には更新の手続きをする必要があるので頭の片隅においといてください。

 ちなみに、私のお店は8月オープン予定でしたので、8月頭に保健所に申請に行きました。そしたら”担当のものが明日から夏休みになりますので、検査にうかがえるのは一週間後です”という答えが返ってきました。保健所へはなるべく早く相談に行くことをおすすめします




保健所の営業許可申請書の書き方と記入例

保健所の営業許可申請書

 この記入例は個人事業主の記入例です。記入する時に分かりにくいところを解説します。

一番上の住所、電話番号

 営業許可申請書の一番上に書く住所店電話番号は自宅です。飲食店の店舗の住所や電話番号ではないので注意です。

営業の種類とは?

 2箇所に記入する必要がある「営業の種類」のところは飲食店営業と記入します。

申請者の欠格事項について

 申請者の欠格事項のところは、これまでに食品衛生法によって罰せられたり、営業許可の取り消しを命じられたりしたことがない人は、どちらもなしで大丈夫です。

食品衛生責任者の資格について

 食品衛生責任者の資格のところの栄・調・製・食鳥・船舶・食管・食監・養講・補講・その他のところは、関係する人が多いところだけを先にまとめます。

栄 ⇒ 栄養士の免許を持っている人
調 ⇒ 調理師の免許を持っている人
製 ⇒ 製菓衛生師の免許を持っている人
養講 ⇒ 養成講習会受講者←食品衛生責任者の資格を取る講習を受講して修了証をもらった人

当てはまるものに丸をつけて、資格をとった日付と登録番号を記入します。


その他の資格の略は以下のようになっています。

食鳥 ⇒ 食鳥処理衛生管理者の資格を持つ人
船舶 ⇒ 船舶料理士の資格を持つ人
食管 ⇒ 食品衛生管理者の資格を持つ人
食監 ⇒ 食品衛生監視員の資格を持つ人
補講 ⇒ 補充講習会受講者
その他 ⇒ 他都道府県の資格を持つ人など

営業設備の大要の書き方と記入例

保健所の営業設備の大要

 営業設備の大要では飲食店の主に厨房の設備についてと、客席、倉庫、更衣室、トイレの設備について書く用紙です。保健所の管轄の自治体によって多少項目が違ったりしますが、おおよそこのような形式です。

 一般的でない言い回しが、けっこうややこしいです。

床の合成樹脂

 合成樹脂は塗床と呼ばれるもので、ざっくりな説明で言うと下地のコンクリートにプラスチックを塗りつけている床のことです。
コンクリートの流せる床をウェットと呼ぶのに対して、水を流さないドライと呼ばれる床は塩化ビニールの長尺シートというもので施工していますが、合成樹脂で問題ありません。

防虫・防その合成樹脂張網

 ”防そ”の”そ”は鼠(ねずみ)のことです。営業設備の大要の中で何度も出てくる合成樹脂張網はいわゆる網戸のことです。

換気の動力換気

換気のところの動力換気は、換気扇やビルなどのダクトのことです。

採光・照明の人工

 採光・照明のところの人工は、蛍光灯や電球といったいわゆる電気のことです。

給水

 上の水質検査成績書のところでも書いていますが、給水が水道で貯水槽を通している場合や井戸水を使っている場合は、その検査をした日付を記入します。

洗浄の自動洗浄機

 洗浄の自動洗浄機は、食器洗浄機のことです。飲食店の流し(シンク)は、横幅45cm、奥行32cm、深さ18cm以上のシンクが2槽以上なければいけません。食器洗浄機がある場合はそれをシンクの1槽として数えることができます。

手洗い

 専従者用手洗、便所の手洗の流水樹槽式は、このページの上にある写真のような手洗器のことです。

廃棄物容器

 廃棄物容器はゴミ箱のことです。合成樹脂製はポリバケツなど、プラスチック製のものを指します。

更衣室の更衣箱

 更衣室の更衣箱はロッカーのことです。

取扱食品の種類

 取扱食品の種類は和食、洋食、惣菜、洋菓子など一般的な言葉で何を扱うお店なのかが伝われば問題ありません。

電話番号

 最後の電話番号は店舗の電話番号です。

営業設備の配置図の書き方と記入例

 この営業設備の配置図は上の営業施設の大要と内容はマッチしないのですが、私が飲食店を開業する時に、実際に保健所に提出した営業設備の配置図です。

 きちっとした図でなくても、これくらいなら書けそうですよね。

営業設備の配置図を書く時のポイント

のボールペン、万年筆を使う
定規を使って書く
■店舗の壁の部分は太線で書く
■店舗のサイズが分かるように各方向の寸法を記入する
■保健所が確認したいことは営業設備の大要にある設備の配置なので、流しや冷蔵庫、手洗器、換気扇、トイレや更衣室といった設備の位置関係が分かるような図にする。
■図だけでなく、設備の名前も記入する。