居抜き店舗物件

 個人経営の小さな飲食店を開業する時に上手に活用したいのが居抜きの店舗物件です。

 飲食店の店舗物件には大きく分けて、「スケルトン」と呼ばれる内装・設備が何もない状態(コンクリートむき出し)の物件と、「居抜き」と呼ばれる前のオーナーが飲食店を営業していた時の内装・設備、厨房機器、什器、お皿やグラス、カトラリーなどが残っている物件とがあります。

 スケルトンの店舗物件では、自分の思い通りの店舗設計ができる分、内装工事費と内装工事をする期間がかかります。個人経営の小さな飲食店であってもスケルトンから開業すると1000万~1500万円くらいかかると言われています。

 それに対して、居抜きの店舗物件は、内装工事を最低限にする、もしくは全くしないことで、初期投資の内装工事費を格段に抑えることができ、内装工事がないぶん短期間で開店することができます。店舗物件は契約して内装工事などをしている間も賃料が発生するので開店するまでの期間を短くすることで、更に初期投資を抑えることができます。

 居抜き物件は、初期投資と開業までの日数を抑えられるのが大きなメリットで魅力的ですが、魅力的なだけに居抜きの店舗物件で飲食店を開業するときに気を付けなければいけないこともあります。



居抜きの店舗物件で飲食店を開業する時に注意したいこと

居抜きの店舗物件にも色々ある

 居抜きの店舗物件と言っても、いろいろあります。店舗物件は、美容院や床屋、エステや整体、雑貨屋などの物販など飲食店以外の居抜き物件もたくさんあります。居抜き物件=飲食店の居抜き物件ではないので注意しましょう。

 飲食店の居抜き物件の状態も様々です。内装からテーブルや椅子、厨房機器やお皿やグラス、カトラリー、メニューブックやセロハンテープやボールペンといった細々とした備品まで全部残っている居抜きもあれば、壁や床、電気やガス、水道の配管は残っていいるけど、テーブルや椅子、厨房機器はいっさい無しという居抜きもあります。気になる居抜き物件は、まずその状態を見に行きましょう。

電気、ガス、水道、排水などは機能しているか、位置は大丈夫か

 内装工事の中で最も費用がかかるのが、電気、ガス、水道などの配管設備です。せっかく費用を抑えようと居抜き物件にしたのに、電気・ガス・水道が問題なく使えるようになっていないと、あとあと費用がかさむことになります。

 電気の容量やコンセントの位置、動力の使えるコンセント、ガス管の位置や水道、排水の場所などもこのままで使えるかチェックします。冷蔵庫やガス器具やシンクを入れ替えたり、増やしたりして配管を伸ばしたり、増やしたりするのは、床や壁がある状態から行うと思っている以上にお金がかかります。

厨房機器はちゃんと使えるか、必要な厨房機器がそろっているか

居抜き厨房機器

 それぞれの厨房機器はちゃんと動くか、冷蔵庫冷凍庫はちゃんと冷えるかを実際に電源を入れてチェックします。壊れているものは買い換えればいいや、と思っていると、厨房機器の撤去費用、処分費用、新しい厨房機器の搬入費用など厨房機器そのもの価格以上に費用がかかります。カウンター超えをしなければいけない場合はその分の人件費もかかってきます。中には厨房の入口が狭くて壁を壊さないと厨房機器の出し入れができない場合などもあります。

 居酒屋の居抜き物件で、居酒屋を始めるから必要な厨房機器が揃っているというわけではありません。自分のお店のメニューを作るのに必要な厨房機器が揃っているかいらない厨房機器は撤去できるか新たに必要な厨房機器があれば、それを設置する場所はあるか、電気ガス水道の接続はできるかなどを時間を掛けてしっかり見極めましょう。

 また、居抜き物件の厨房機器の中にリース(月々使用料を払って借りている)のものが混ざっていて、契約したらリース料の請求が来たというトラブルが良くあります。リースの厨房機器があるかの確認もしておきましょう。
 

内装はお店のコンセプトと合っているか

 居抜きの店舗物件の内装やテーブルや椅子、什器全般のイメージは開業する飲食店のコンセプトに合っているか、またレイアウトは変えられないことも多いので、内装工事をする場合は施工業者に相談します。

居抜き物件の原状回復の義務を確認

 居抜き物件の場合の原状回復の義務もきちんと確認しておく必要があります。「原状回復」はどこまでのことを指すのかを確認してから内装工事をすすめます。とりあえず、引き渡しの状態の写真は撮っておくようにします。スケルトンでの返却が義務付けられていると、お店をやめる時に内装の解体撤去にかなりの費用がかかることになります。

前のお店がやめた理由

 居抜き物件、スケルトンにかかわらず、前のお店が退去した理由を聞いておきましょう。退去した理由によってはその物件で開業することが不利なこともあります。できれば不動産屋や大家ではなく近隣のお店の方や一般の方に聞けるといいです。

造作譲渡の価格は適正か

 居抜き物件の電器、ガス、水道などの設備、冷蔵庫、冷凍庫、シンクにガス台などの厨房機器、客席のテーブルや椅子、お皿やグラスなどは、前のお店の経営者の持ち物です。これらの設備(造作)を譲り受けることを造作譲渡(ぞうさくじょうと)と言います。造作譲渡には、有料の場合と無料の場合があります。

 有料の場合は、その価格が適正かを上で書いているようなことをチェックして、判断をします。造作譲渡費が無料であっても、厨房機器が壊れていたりすると、撤去費用、処理費用と余計なお金がかかってしまうので、無料でもしっかり必要な設備なのか、ちゃんと動くのかを確かめます。

 居抜き物件の内装設備や厨房機器などは前のお店のオーナーから譲渡されるものなので、ちゃんと使えるかどうかは不動産屋や家主は全く関与しません。自分の目で、ときには専門家(内装の施工業者など)の目を借りて念入りにチェックしましょう。



居抜き店舗物件のデメリット

▶居抜き物件の電気、ガス、水道の設備や厨房機器をいくら入念にチェックしても、長年使っていたモノは、突然壊れてしまうというリスクが伴います。そして、多くの場合、保証はありません

▶上で書いたこと重なってしまいますが、居抜きの店舗物件では大幅なレイアウトの変更は難しいです。物件を契約した後で、その物件を大幅にリニューアルするとなると解体撤去作業からのスタートとなるので、スケルトンの物件で内装を造るよりコストがかかってしまうこともあります。

▶店名や看板を変えても、居抜き物件の内装や、テーブルや椅子をそのまま使用すると、前のお店との違いがお客さんに伝わりづらくなってしまいます。いかに工夫して前のお店のイメージを払拭して、新しいお店のイメージを打ち出せるかも考える必要があります。
 

居抜き物件を探せるサイトまとめ

 店舗物件全体のうち、スケルトンの店舗物件と比べて居抜きの店舗物件の数はそれほど多くありません。飲食店の店舗物件となると更に数が少なくあるので、不動産屋を一軒一軒を廻って探すのはけっこう大変です。居抜きの店舗物件を専門に扱っているサイトを利用して探します。

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