控除

 控除は「こうじょ」と読みます。飲食店を開業して確定申告をする時に、この控除という言葉がしきりに登場します。

 控除とは、”ある金額から一定の金額を差し引くことである”とウィキペディアでは解説されています。

 税金は、儲けた金額に直接かかるのではありません。儲けた分からその人の環境やお金の使いみちによって、思いやりを引いた分に税金がかかります。その思いやりが控除です。



確定申告の控除とは

 税金の計算をする時は、所得からある一定の金額を差し引いてその分は無税にすることができるのが確定申告の時の「控除」です。

 売上から経費を引いたものが所得です。所得からこの控除(こうじょ)を引いたものが、課税所得(かぜいしょとく)、つまり、税金がかかる金額です。
 

売上(収入) ー 経費 = 所得
所得 ー 控除 = 課税所得
 
 
 控除された(差し引かれた)金額には税金が掛からないので、そういった意味では、経費(けいひ)と混同してしまいそうですが、経費は「売上に必要だった金額」なのに対し控除は、奥さんがいるとか、国民年金を払ったとか、医療費がたくさんかかちゃったとか「ある条件に当てはまる場合に所得から差し引いて良い金額」のことで、売上には全く関係しません



控除の種類

生命保険控除

 養わなければいけない家族がいる人や、障害をもっている人はその分税金を減らしますというような、その人のおかれた環境による控除や、健康保険料や年金を払った分は全額、生命保険や医療費に使った分は一部、お金の使いみちによって税金がかからないようになる控除など、控除にはいろいろな種類があります。

 控除額が38万円というのは、税金が38万円安くなるという意味ではありません。税金がかかる金額(課税所得)から38万円差し引けるという意味です。税率は控除金額を差し引いた課税所得の額によりますが、例えば税率が10%だとしたら、控除額が38万円なら3万8千円、税率が20%なら5万6千円、所得税が安くなります

 多くの人に関係する控除と特定の人にしか関係しない控除がありますが、どんなものが控除の対象になるのかを知っておかなければ、控除することができません。

 控除の項目によっては控除額の計算の仕方などについても書いていますが、まずは自分に関係しそうな控除の種類と、控除はこんなふうに計算されているんだな、という理解ができれば十分です。

基礎控除

 基礎控除は、すべての人が当てはまる控除です。金額は38万円
 

青色申告特別控除

 青色申告をした人に当てはまる控除。用意する帳簿によって控除額が10万円の場合と65万円の場合がある。

配偶者控除、配偶者特別控除

 配偶者(妻もしくは夫)がいて、その配偶者が一定の額以下の収入しかない場合には、38万円〜3万円が控除される。
★★★

社会保険料控除

 その年に支払った国民健康保険料、国民年金、国民年金基金などは、全額、社会保険料控除として控除される。

生命保険料控除

 その年に支払った生命保険料によって、最高12万円が控除される。
★★★

扶養控除(ふようこうじょ)

 16歳以上の扶養家族(養っている家族)がいる場合の控除。16歳未満の子供は児童手当が支給されたり、高校無償化などがあるため、扶養控除の対象にはなっていません。

 扶養控除の対象年齢と控除額はこうなっています。
 

区分区分の説明控除額
一般の控除対象扶養親族16歳以上22歳未満
23歳以上70歳未満
38万円
特定扶養親族19歳以上23歳未満63万円
老人扶養親族70歳以上で同居している
70歳以上で同居していない
58万円
48万円

医療費控除

 医療にすごくお金を使ったら、一部を税金がかからないようにしますよという控除です。所得の5%もしくは10万円の少ない金額を超える医療費については税金をかからなくしますよというのが医療費控除です。

 医療費とは、生計を一にする家族や親族が病院や歯医者に行って支払った治療費、その時の薬代はもちろん、通院にかかった費用なども含まれます。また薬屋さんで買った一般的な医薬品も医療費に含まれます。

 人間ドックや健康診断のような検査や、美容整形などは医療費には含まれません。生命保険に加入をしていて、医療保険金や入院費給付金などを受け取った場合は、その分を医療費から差し引いて計算します。
 

支払った医療費 ー 保険金などで補填された金額 ー (所得の5%or10万円の少ない方)= 控除される医療費
 

地震保険料控除

  地震保険に加入して支払った保険料は最大5万円の控除になる。

地震保険料

地震保険料控除される額
5万円以下支払った保険料の全額
5万円以上5万円

旧長期損害保険料

 保険期間が10年以上で満期返戻金が支払われる旧長期損害保険料についての控除額は下の表のようになっている。

支払った保険料の額控除される額
1万円以下支払った保険料の全額
1万円〜2万円支払った保険料 × 0.5 + 5千円
2万円以上1万5千円

 地震保険と旧長期損害保険料のどちらも支払っていて、控除額の合計が5万円を超える場合は上限の5万円が控除額になる。
 

寄付金控除

 寄付をした金額が控除される。寄付と聞くとあまり関係なさそうだが「ふるさと納税」はこの寄付金控除になる。
 寄付金と所得に0.4をかけた金額のどちらか少ない方から2000円を引いた額が控除額になる。
 

小規模企業共済等掛金控除

  小規模起業共済というのは、個人事業主のための積立です。飲食店を営む個人事業主が、お店を閉める時や引退して人に譲る時、死亡したときに受け取れる積立と、65歳以上になったら年金のように受け取れる積立の2種類があり、掛け金の全額が控除される。
★★★

寡婦・寡夫、勤労学生、障害者控除

 飲食店を開業して経営しているあなた自身が寡婦・寡夫、勤労学生、に当てはまる時の控除。障害者控除はあなた自身、配偶者、親族が当てはまる時の控除です。

寡婦(かふ)控除

 寡婦(かふ)とは、夫と死別や離婚をして再婚をしていない、または夫が生死不明の女性のことを指します。飲食店を開業して経営しているあなたが寡婦である場合に受けられる控除です。

 寡婦(女性の場合)の区分控除される額
養っているの親族や子がいる27万円
養っている親族や子がいて、所得が500万円以下35万円
所得が500万円以下(養っている親族、子がいるかは関係ない)27万円

寡夫(かふ)控除

 寡夫(かふ)は、妻と死別や離婚をして再婚をしていない、または妻が生死不明の男性のことを指します。男性の場合の控除の条件はちょっと厳しくなります。飲食店を開業して経営しているあなたが寡夫である場合に受けられる控除です。

 寡夫(男性の場合)の区分控除される額
所得が500万円以下で養っている親族、子がいる27万円

勤労学生控除

 飲食店を開業して経営しているあなたが学生である場合に受けられる控除です。控除金額は27万円

障害者控除

  障害者控除はあなた自身が障害を持っている場合の他に、配偶者や養っている親族が障害を持っている場合に受けられる控除です。障害者控除には障害者に対する控除と特に重度な障害を持っている特別障害者によって控除額が変わります。

 区分控除される額
障害者27万円
特別障害者40万円
特別障害者と同居75万円

雑損控除

 自分や配偶者や親族など、生計を一にしているひとが、火災や盗難、横領などにあって住宅や家財などに損害を受けた時に、その損害を控除できます。

  

損害金額 – 保険金で補填される金額 – (所得 × 0.1) = 控除金額 



 いろんなケースの人たちの負担が軽くなるように考えられて控除があるので、当てはまるものはしっかり控除したいですね。