飲食店の開業を目指して会社を退職すると、これまで会社が全て面倒を見てくれていた医療保険、年金などは全部自分で手続きをして納めなければいけません。
飲食店開業にともなう年金の切り替え手続き、おさえておきたい年金の基礎知識、国民年金基金について書いています。
年金はもらえるか分からないから払わない!という気持ちも解らないではありませんが、年金を納めるのは義務ですし、年金制度は、老後にお金がもらえるだけではありません。
国民年金に加入しておくと、いざという時にもらえるお金があることを覚えておきましょう。
もくじ
厚生年金と国民年金の違い
年金には国民年金(こくみんねんきん)と呼ばれる年金と厚生年金(こうせいねんきん)と呼ばれる年金があります。国民年金は個人事業主の自営業者が入る年金で、厚生年金は会社員、公務員が入る年金という説明がされます。間違いではありませんが、実は年金の仕組みは下の図のようになっています。
自営業者だけではなく、会社員・公務員とその配偶者など20歳以上60歳未満の人はみんな入っているのが、国民年金です。なので、国民年金は基礎年金とも呼ばれます。厚生年金と呼ばれている年金は、国民年金+厚生年金のことを指しています。
第1号被保険者とは
第1号被保険者と呼ばれる自営業者などは、国民年金のみの加入です。国民の義務として納めなければいけないのは国民年金の保険料だけです。第1号被保険者の国民年金の上にある国民年金基金については後述します。
第2号被保険者とは
第2号被保険者は、会社員・公務員のことで、厚生年金と呼ばれる国民年金+厚生年金に加入します。国民年金と厚生年金の2つの年金分なので、納める保険料も国民年金だけの自営業者よりは多くなりますが、保険料の半分は会社が負担してくれます。そして、納めた額が多いぶん返ってくる年金も多いです。
第2号被保険者の年金の保険料は収入によって決まります。独身だから、配偶者がいるから、夫婦共働きだからということは保険料には影響しません。
第3号被保険者とは
第3号被保険者は、会社員・公務員の配偶者、つまり妻(もしくは夫)のことです。「会社員の夫(もしくは妻)の厚生年金に入っている」という表現は間違いではありませんが、上の図からも分かるように第3号被保険者が加入しているのは、実は国民年金だけです。
専業主婦の旦那さんが会社員で厚生年金に入っている場合、妻は保険料を納めませんし、夫が負担しているわけでもありません。第3被保険者の年金は第2号被保険者の厚生年金制度(国民年金+厚生年金)で集められた全体の保険料から出されています。
家族の社会保険に入る
会社を辞めて飲食店を開業する場合に、配偶者(妻または夫)が会社勤めで社会保険(健康保険+厚生年金)に加入していれば、扶養に入る事ができます。
年収130万円以内であれば第3号被保険者として認められます。年金の場合は年収130万円と書いていますが、経費が認められます。飲食店は開業するための初期投資が大きいので、年間の収入(売上)から 経費を引いた額が130万円を超えるまでの暫くの間、第3号被保険者として国民年金に加入することができます。保険料を納めずに国民年金分を納めている状態になります。
この社会保険(健康保険+厚生年金)の扶養の対象になるかどうかは、会社が加入している健康保険の組合、協会にも関係してくるので、早めに配偶者の勤務先の会社に相談して手続きを進めていくことをおすすめします。
厚生年金から国民年金へ切り替える手続き
一般的には、会社を辞めて個人事業主として飲食店を開業する時には厚生年金から国民年金に切り替える手続きをします。年金には医療保険のように、任意継続のような制度はないので切り替えるだけになります。
「厚生年金から国民年金に切り替える」と書きましたが、厚生年金は国民年金+厚生年金のことなので、実際には次のように「被保険者の種別の変更」ということになります。
・会社員として飲食業などに従事していた独身の人が会社を辞めたら、上の図でいうところの第2号被保険者から第1号被保険者に変更します。
・専業主婦の奥さんがいる会社員が飲食業など従事していた会社を辞めたら、本人は第2号被保険者から第1号被保険者に、奥さんは第3号被保険者から第1号被保険者に変更します。
被保険者の種別の変更の手続き
【手続きする場所】
住んでいる(住民票のある)市区町村の役場の国民年金課
【必要な書類】
年金手帳(扶養配偶者ありなら配偶者のも)
退職した日が確認できる書類(離職票、退職証明書など)
印鑑
年金を貰えるのは老後だけじゃない!
年金と聞くと、老後にいくらもらえるのかが注目されがちですが、実は年金がもらえるのは老後だけではありません。
65歳以上になったらもらえるいわゆる年金のことを老齢基礎年金と言います。
この老齢基礎年金の他にも、障害基礎年金、遺族基礎年金、寡婦年金(かふねんきん)、死亡一時金があります。
年金は、自分が障害者になった時や、死んでしまった時に子供や配偶者にも支給されます。飲食店を開業する個人事業主であれば、そういった不測の事態にもしっかり備えておきたいです。
ここでは、ある程度細かく解説していますが、国民年金に加入しているとこんなときにもお金がもらえるんだなー助かるなーくらいに思っておけば十分です。
老齢基礎年金とは
年金保険料を10年以上(以前は25年以上でした)納めてきた人が65歳から受け取るのが、老齢基礎年金です。年金は死ぬまで受け取ることができる終身年金です。
障害基礎年金とは
障害基礎年金とは、怪我や病気で日常生活に制限を受けるような場合に、年金から金銭的な援助を受けられるものです。この年金は65歳以下でないと受けることができません。
障害基礎年金を受け取れるのはどんなとき?
▶一定の障害の状態になった時
国は障害の程度を重い方から1級、2級、3級と分けていて、国民年金の場合、障害の程度が1級または2級と認められたとき
▶年金保険料を一定期間納めている
①その障害の初めての診察以前の年金保険料を払う期間の3分の2以上年金を収めている(免除も含めて良い)
②その障害の初めての診察の前の1年間の年金保険料の滞納がないこと
①②のどちらかを満たしていること
遺族基礎年金とは
遺族基礎年金とは、国民年金に入っている人が死亡した時に、子供(18歳まで)または子供のいる配偶者(妻または夫)に支給される年金のことです。
遺族基礎年金を受け取れる資格は?
①死亡前の年金保険料を払う期間の3分の2以上年金を収めている(免除も含めて良い)
②死亡前の1年間の年金保険料の滞納がないこと
①②のどちらかを満たしていること
寡婦年金とは
寡婦年金(かふねんきん)とは、夫が年金を受け取らずに死んでしまった場合に妻が受け取れる年金です。
10年以上国民年金を納めている夫が亡くなった場合に、その夫と10年以上結婚している妻が年金をもらえます。
寡婦年金が受け取れるのは60歳から65歳の間です。
妻が年金を受け取らずに亡くなっても、夫は年金をもらえません。
死亡一時金とは
死亡一時金とは、合計で3年以上国民年金を納めている人が、年金を受け取らずになくなった場合に受け取れる一時金です。
死亡一時金は、死亡した人と生計を一緒にしている配偶者(妻または夫)、子供、親、おじいちゃん、おばあちゃん、兄弟で遺族基礎年金がもらえない人が受け取ることができます。
寡婦年金を受け取る資格がある人は、「寡婦年金」、「死亡一時金」のどちらか一方しか受け取れません。